豊かな生物多様性
かがやく照葉樹の森
やんばる地域の森林は、北緯27度線上の亜熱帯地域に成立する常緑の照葉樹林で、照葉樹林としては国内では最大級の広がりを有しています。やんばる地域の自然の特徴として、降水量が多く湿度が高いことがあげられます。最高峰である与那覇岳では年平均3,000mmもの降水量があり、山頂周辺は年間を通して霧が発生します。そのため大気中には水分が多く含まれ、山頂周辺の森林内の湿度は高く保たれています。
このような森林が成立する湿潤な条件を持つところは亜熱帯地域の3分の1 に過ぎず、やんばる地域の森林は世界的にも希少なものです。日本では、沖縄諸島、八重山諸島、奄美群島、小笠原諸島に亜熱帯林が成立しています。
イタジイ(スダジイの沖縄での地方名)が優占するやんばる地域の照葉樹林の特徴的な景観としては、ブロッコリー状の特徴的な樹冠、春の輝くような新緑の緑、イジュなどの「木の花」の開花などが挙げられます。また、ヤンバルクイナ、ノグチゲラ、ヤンバルテナガコガネ、オキナワセッコク、クニガミトンボソウ等の地球上でやんばる地域にしか存在しない生物種が数多く生息・生育していることが、やんばる地域の森の魅力を増大させています。
個性的で多様な生きものたち
やんばるには、日本全体で確認されている生物の種数に対して、鳥類では約半分、在来のカエルでは約4分の1が確認されるなど、高い割合を占める生物の種が生息・生育しています。また、やんばる地域の面積(北部3村の合計面積)は日本全体の面積のわずか0.1%以下ですが、そのせまい地域に非常に多様な生物の種が生息・生育しており、もともと数が少ないため絶滅の危機にある動植物も多くみられます。
さらに、琉球列島は他の地域に見られない固有種が多いことが知られていますが、特に豊かな森林が広がるやんばる地域にはヤンバルクイナ、ノグチゲラ、ナミエガエル、ヤンバルテナガコガネなど多くの固有種が生息・生育しています。
わずかな面積の地域に、多くの希少種を含む多様な種類の生きものたちが独自の生態系をつくりあげ、互いにつながりをもって生きている場所、それがやんばるです。