ほ乳類~イタジイの森に育まれる動物たち~
やんばる地域の森には、リュウキュウイノシシやケナガネズミ、オキナワトゲネズミ、コウモリの仲間など10種類の哺乳類が生息しています。キツネやイタチなどといった、肉食性の哺乳類がいないことが、やんばるの動物相の特徴のひとつです。(ただし、近年では、人間によって持ち込まれたマングースやノネコ・ノイヌが問題になっています。詳しくはこちら)
やんばる地域にはイタジイをはじめとして、ドングリを実らせる樹木が5種類あります(イタジイ、マテバシイ、オキナワウラジロガシ、ウラジロガシ、アマミアラカシ)。これらの実は、特にエサの少ない冬場は森の生き物にとって重要な食料になります。大きなリュウキュウイノシシから、ケナガネズミ、オキナワトゲネズミなどの小さな哺乳類、また多くの鳥類や、意外なところではサワガニ類なども、ドングリを食べています。このように、やんばるの森の多くの生き物が、シイの実に支えられて生きています。
きわめて希少、やんばるの固有種 ~オキナワトゲネズミ~
レッドリスト絶滅危惧IA類(CR)、国の天然記念物
国の天然記念物でやんばる固有種のオキナワトゲネズミは、主にノネコによる捕食のために数が激減し絶滅が心配されましたが、2008年(平成20年)に研究調査により再び生息が確認された、非常に貴重な種です。頭から尻尾の付け根までの長さが約11~17cm、全身にトゲ状の毛を持ち、ピョンピョンと飛び跳ねながら移動するのが特徴です。夜行性で木の実や昆虫を食べると言われていますが、詳しい生態は不明です。
このトゲネズミの仲間(トゲネズミ属)は世界中でも沖縄島、徳之島、奄美大島にしか生息せず、古い時代の生き残りといわれています。3つの島でそれぞれ体の大きさや染色体が異なるなど、別々の進化をしており、生物学的にも大変貴重な種です。
白い尾っぽの大きなネズミ ~ケナガネズミ~
レッドリスト絶滅危惧IB類(EN)、国の天然記念物
日本最大の野ネズミで、頭から尻尾の付け根までの長さが約30cm、さらに尻尾の長さが約30cmにも達します。長い毛を持ち、尾の先から半分ほどが白いのが特徴です。主に樹上で生活して木の実や昆虫などを食べています。夜行性で昼間は木のうろなどで休んでいますが、夜間に木の上で活動するのが観察されています。オキナワトゲネズミと同様に、世界でも沖縄島、徳之島、奄美大島にのみ生息し、沖縄ではやんばる地域の森のみに生息する大変貴重な種です。国の天然記念物に指定されています。
大型のコウモリ ~オリイオオコウモリ~
全長約25cmにもなる大型のコウモリです。沖縄諸島全域に生息し、市街地から森林まで普通に見られます。夜に活動し、市街地周辺でも果物や木の実を食べる姿をみかけることがあります。夏に実るフクギの実や、秋に実るモモタマナの実などが大好物です。日中は木にぶら下がり休息します。
やんばる唯一の大型哺乳類 ~リュウキュウイノシシ~
ニホンイノシシよりも小型で、体長は90~110cm程度。 南西諸島にのみ生息する小型種で日本イノシシの亜種とされています。主に夜に行動し、イタジイ(スダジイ)等の木の実や、小動物(昆虫やミミズ、カタツムリなど)を食べます。畑の農作物を食べてしまうこともあるため、昔は畑と山の間に猪垣を築いて、イノシシの被害から農作物を守りました。