植物~世界的にも希少な亜熱帯林の植物~
やんばる地域の森は亜熱帯では珍しい多雨林で、維管束植物だけでも1,000種類以上を超える種が確認されています。特に与那覇岳などの山頂周辺は、年間を通して霧が発生します。そのため大気中には水分が多く含まれ、山頂周辺の森林内の湿度は高く保たれています。このような環境に着生植物やコケの仲間がたくさん見られるのも、やんばる地域の森の特徴の一つです。森の中は地面から樹木の表面までたくさんの緑で覆われ、高く育つ樹木の幹や枝には着生する多様なランの仲間が見られます。
やんばるの森をつくる ~イタジイ~
イタジイ(スダジイの沖縄での地方名)は沖縄本島北部の森を構成する優占種で、大きいものでは木の高さ約20m、幹の直径1mに達する常緑の広葉樹です。遠くから眺めるイタジイの森は、樹冠がもこもことしてブロッコリーのようにも見えます。秋にはシイの実(ドングリ)を豊かに実らせ、冬の間には、エサの少ない森の動物たちにとっての貴重な食料になります。
また、昔は山での生業の主要な材木として、薪炭や建築用材として用いられ、やんばる地域の人々の暮らしも支えてきました。
梅雨に咲く白い花 ~イジュ~
イジュは、ツバキ科に属する照葉樹で、やんばる地域を代表する花として昔から親しまれています。梅雨時のやんばるの森に白い花を満開に咲かせ、白い花びらに黄色いおしべの清楚な花で、ほのかな良い香りもします。樹皮には毒があり、昔の人はこの樹皮を粉末にして魚毒として用いたほか、シロアリにも強いので高級な建築用材としても重宝されました。
大木から垂れ下がるブーケ ~オキナワセッコク~
国内希少野生動植物種(種の保存法)、レッドリスト絶滅危惧IB類(EN)
茎が束ねるように密に生え、約70cmも細長く垂れ下がる着生ランです。イタジイやオキナワウラジロガシなどの大木の幹に着生し、直径5cmほどの白色または淡紅色の美しい花を咲かせます。園芸目的の違法な採取や、森林の伐採により数が非常に減っており、絶滅の恐れがあります。やんばる地域の固有種で、種の保存法の国内希少動植物種にも指定されており、採取・譲渡などは禁止されています。
大木になるシダ ~ヒカゲヘゴ~
高さが10m以上にもなる木生のシダです。大きく広げた葉は一枚の大きさが3m近くにもなります。湿度が高く、日当たりの良い場所に生えます。木のように見えますが、シダ植物なので実はつけず、胞子を飛ばすことで増えていきます。幹にある面白い模様は、葉が落ちた痕が残っているためです。背が高く大きく広がった葉は遠くからでも良く目立ち、亜熱帯らしい森の景観に一役買っています。